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英語から見た日本語における言葉の重なり

 先日会社の法務部で契約を担当している若い人から商標の「通常使用権」の「権」は英語ではどう表すのかとの質問を受けた。これはlicenseで十分です。“通常使用権”の“通常”を強調するときは、non-exclusive licenseとなります。この場合のlicenseは、詳しく言うと、
a license to use a registered trademarkとなります。

 似た質問を特許事務所で翻訳をやっている人から受けたことがあります。それは、審査請求書や審判請求書」の「書」を英語ではどういうのか、というものです。回答は、“なしでよい”となります。すなわち、審査請求書にあたる英語は
a request for examinationですが、a requestには既に「書」は含まれていますし、審判請求書には不服審判書、無効審判書とありますが、要するにan appealですから、appealに「書」は含まれています。したがって、「審査請求書を提出する」は、file a request for examination,「審判請求書を提出する」は
file an appeal …で十分です。同様の例は英語には沢山あります。

 「交通量」の「量」、「積雪量」や「降水量」の量なども英訳不要で、traffic、
snowfall、rainfallで十分です。翻訳者は必ずamountやquantityと英語にします。間違いではないのですが、簡潔さを欠きます。こういうのが数十頁にわたって重なるから日本人の英語は“言葉多くて意味不明”という批判が出るのです。 「大量」や「少ない」などの形容詞がつくのであれば、相応の形容詞をつければよいことになります。

例、  (1) This year we have had little snowfall.
     (2) In Kyoto there is a terrible traffic in autumn.

 以上ご参考になれば幸いです。

                                         (弁理士 木村進一)
                                         

by skimura21kyoto | 2007-10-30 20:53  

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