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米国の判例から学ぶ

WIRELESS AGENTS LLC. vs SONY ERICSSON MOBIL COMMUNICATIONS AB, et al

CAFC 06-1054 (decided July 26, 2006)

この判例から学ぶもの
(1) 発明の特徴を強調するあまり種々の態様をあげてそれらの欠点を指摘するときは慎重に。侵害者は、欠点を指摘された態様を使うかもしれない。

(2) ある言葉が何を意味し、何を意味しないかの意味の定義には細心の注意が必要。

(3) 発明と従来技術との比較において、あまり詳細に先行文献にある従来技術を説明しないように。最低限の叙述に留めておくこと。その代わりIDSで先行技術文献を提示しておく。
【注】IDS: Information Disclosure Statement(情報開示宣誓書)の略。これは特許法規則§1.56に規定の出願人に課せられたthe duty of candor and good faithに基づくものです。知っている従来技術を秘匿しておくと、たとえ特許がとれても肝心の特許権侵害訴訟の席で相手側からその点を突かれ、無効になったり、権利行使不能(unenforciable)となる。要するに、国に詐欺(fraud)を働いたという考え方です。

(4) 発明の概要(Summary of the Invention)はできるだけ短く。一般には特許請求の範囲の内容をそのままパソコンの複写で写していますが、特許請求の範囲の範囲は拒絶を受ければ必ず補正しますから、補正後の特許請求の範囲とこのSummaryの内容が整合しなくなりおかしなことになってしまいます。ここでは後で請求の範囲がどう代わっても包含できるように広く書いておく必要があります。

(5) 発明の背景(Background of the Invention)は短く、発明が解決せんとしている問題点だけにとどめる。明細書のBackground部分は全く不要と言う人もいる。背景技術の書き方によっては発明の外延を狭めてしまいます。

(6) 発明の効果(利点)をあまり強調しないこと。その他の利点があるかもしれない。また、言った通りの効果がないかもしれない。となると、嘘をついたことになります。これも特許権無効の原因になります。

(7) always(常に)、never(決して)、must(ねばならない)、can not(することができない)などの強い言葉は使用しないこと。これらは請求の範囲を狭めるのに利用されるおそれがある。裁判所はこういう明らかに限定的な言葉があるとクレームの範囲を広げるようには解釈しないのが常です。しかし、日本人の英文にはしきりと使われています。要するに、副詞や形容詞は使用しないことです。

(8) 種々の実施例が考えられるときは、”according to an embodiment” または”according to an aspect”という表現を用いること。

【注】 本ブログでは判例の内容説明は省きましたが、後日掲載致します。
                        (弁理士 木村進一)
                     「特許評論」は登録商標(第4556242号)です。

by skimura21kyoto | 2008-03-11 18:47  

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